松江地方裁判所 昭和25年(行)13号 判決 1951年2月23日
松江市寺町九十番地
原告
目次久悦
右訴訟代理人弁護士
川上広蔵
松江市内中原町
被告
松江税務署長
毛利坂次郞
右訴訟代理人大蔵事務官
德永正
岩田隆之
服部賀壽男
米沢久雄
土屋祥一
右当事者間の昭和二十五年(行)第一三号所得金額更正決定取消請求事件について、当裁判所は昭和二十六年二月九日に終結した口頭弁論に基いて次の通り判決する。
主文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「被告が昭和二十五年二月二十五日付通知書によつて、原告の昭和二十四年度の所得額を金十二万円とするとの所得額更正決定を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めその請求原因として、次の通り述べた。
被告は、昭和二十五年二月二十五日付通知書によつて、原告の昭和二十四年度の所得額を金十二万円(その税額金二万八千七百円)とするとの所得額更正決定をなし、原告は右通知書を同年三月八日に受領した。しかしながら原告はその実際の所得額は金八万円(その税額金一万四千七百円)であつたから、右決定を不服として同月二十八日広島国税局長に対し審査の請求をしたが、同局長は右審査請求後三箇月を経過しても何等の決定をもしなかつたものであるから、原告は被告のなした前記更正決定の取消を求めるために本訴に及んだのである。
被告訴訟代理人は本案前について主文同旨の判決を求め、その理由として次の通り述べた。
所得額の更正決定の取消を求める訴は、改正前の所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第四十九條、行政事件訴訟特例法第二條により更正決定の通知を受けた日から一箇月以内に審査の請求をなし、右に対する決定を経た後でなければ提起しえないのに原告はその主張にかかる更正決定通知書を昭和二十五年二月二十八日に受領しながら、同年四月三日右に対する審査の請求をしたもので、右は前記期間経過後のものであつて審査の請求に対する決定はもちろんこれを経ないまま出訴したものであるから、本訴は不適当であつて却下さるべきものである。
次いで被告訴訟代理人は本案について「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め事実に対する答弁として次の通り述べた。
原告主張事実中被告が昭和二十五年二月二十五日付通知書によつて、原告の昭和二十四年度の所得額を金十二万円(その税額金二万八千七百円)とするとの所得額更正決定をしたことはこれを認めるがその余の事実はすべて争う。
証拠として、
原告訴訟代理人は、証人太田秀の証言を援用し、乙第一号証の五、六並びに乙第四号証の成立は不知その余の乙号各証の成立を認めると述べた。
被告訴訟代理人は乙第一号証の一の(イ)(ロ)(ハ)、同号証の二、同号証の三の(イ)(ロ)、同号証の四から六まで、乙第二号証から乙第四号証までを提出した。
理由
被告が原告に対し昭和二十五年二月二十五日付通知書によつて、原告の昭和二十四年度の所得額を金十二万円(その税額金二万八千七百円)とするとの所得額更正決定をしたことは当事者間に争がない。
成立に争のない乙第一号証の二、同号証の三の(イ)(ロ)、同号証の四並びにその体裁に徴して真正に成立したものと認める同号証の五、六、を合わせ考えると、被告は昭和二十五年二月二十七日原告にあて
前記更正決定通知書を発送し、原告は翌二十八日右通知書を受領したことが認められ成立に争のない乙第二、第三号証によれば右決定に対し原告が広島国税局長に宛てた審査請求書を松江税務署に提出したのは同年四月三日であつたことが認められ、以上の各認定に反する証人太田秀の証言は信用しない。
そして所得額の更正決定の取消を求める訴は、改正前の所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第四十九條行政事件訴訟特例法第二條により決定通知書を受けた日から一箇月以内に審査の請求をなし右に対する決定を経た後でなければ提起しえないのであるから原告が右法定の期間内に審査の請求をしなかつたものである以上、本訴は不適法であるといわねばならない。したがつて、本訴はその他の点について判断するまでもなく不適法として却下し、訴訟費用は民事訴訟法第八十九條を適用して原告に負担させることとして、主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 松本冬樹 裁判官 長谷川茂治 裁判官安部正は差支のため署名押印することができない。裁判長裁判官 松本冬樹)